■ 1.【日常の違和感・痛みの自覚】
あなたは日々、経営者やリーダーとしてどのような基準で判断や意思決定をされていますか?
「自分の判断は常に客観的で正しい」と思っていても、私たちは知らず知らずのうちに、立場や組織の力関係による「思い込み」に目を曇らせてしまうことがあります。
現場の正しい意見が握りつぶされ、誤った決定のツケが最も弱い立場の人間に押し付けられていくとき、組織の信頼とやる気は音を立てて崩れていきます。
■ 2.【セッション事例】
以前、私がコンサルティングに入っていた、ある会社さんの出来事です。
(許可を得て、本人が特定できないように加工してご紹介します)
マーケティング部に配属された新人社員のAさんは、「自社の社長を新聞や雑誌などのメディアに取り上げてもらいたい」と考えました。
そこで、いろいろと企画を練り上げてプレスリリースを作成し、20社近くのメディアに郵送。
その後も丁寧な電話やフォローメールなどを重ねたそうです。
すると熱意が実り、その中のある新聞社1社から「ぜひ御社の社長を取材させてください」と連絡が入りました。
しかし同時に、先方から有料の記事広告の逆提案も持ちかけられたのです。
その際、読者数や読者層などの詳細なデータが並んだ、立派な提案資料をもらったそうです。
メディアの取材ではよくある話です。
ですが、その有料記事広告の掲載費用は決して安くありませんでした。
たとえその読者数の1%が目にしたとしても、自社のターゲット層でなければ実際に問い合わせに繋がるかどうかは全くの別問題です。
そこでAさんは、社長とNo.2の幹部に向けて自身の意見をストレートに伝えました。
「ウチは特殊な商品を扱っており、一般消費者向けではないため、今回の有料広告で費用対効果がどれだけ見込めるか分かりません。
既に無料で取材に来てくれると言っていただいているので、まずは無料取材だけにして、有料の記事広告は今回、見送りましょう」
すると、その意見を聞いた幹部は激昂し、こう言い放ったそうです。
「つべこべ言うな!あの新聞だったらやるべきだ。
社長は、やると言ったらやるんだ!」
幹部はそう怒鳴り散らし、有料記事広告の出稿を強引に決定してしまいました。
その場にいた社長は、黙ったまま何も言わなかったそうです。
数週間後、その新聞に社長の記事広告が大きく取り上げられました。
しかし結果は、問い合わせ「ゼロ」。
しかも、掲載後1週間のホームページのアクセスを分析しても、新規アクセスは通常通りの横ばいで、1ミリも増えていませんでした。
元々そのホームページのアクセス数自体が少ないため、分析結果が間違っているわけではなさそうでした。
結果が出なかったことで、幹部も社長も「あの新聞社はダメだ、お金を無駄にした」と文句をたらたらと言い始めました。
Aさんは心の中で「だから、やめといた方がいいと言っていたのに……」と落胆していました。
ところが事態はそれだけで終わりませんでした。
なんと幹部は、「私は本当はどうしようか迷っていたのに、あの新人社員のAがどうしてもやりたいと言うから、仕方なくやったんだ」と、あろうことかすべての責任を新人のAさんに擦り付けたのです。
人は誰しも忘れることはありますし、立場上の多忙さから記憶が曖昧になることもあるでしょう。
しかし、明らかな責任転嫁に納得のいかないAさんは、「私はやりたいなんて言っていません。
むしろ、やめた方がいいと言ったのです」と憤慨して抗議しました。
それでも幹部は「あの社員はダメだ」と最初から決め付け、一切話を聞こうとしなかったそうです。
たまたま、Aさんが「有料広告はやるべきではない」と発言していた現場に同席していた先輩社員が、間に入ってなだめたことで、Aさんはかろうじて冷静さを取り戻しました。
後日、他の社員さんたちにもヒアリングを行ってみると、このようなケースは社内で日常茶飯事であることが分かりました。
その幹部は、何でも自分の思い通りにならないと気が済まず、少しでも自分の考えと違う意見を言われると、高圧的に怒り出すクセがあったのです。
それによって何人もの社員と衝突し、多くの人間がやる気を失って辞めていっていました。
しかし、幹部本人にはその自覚が全くありません。
むしろ「辞めていくあいつらのメンタルが弱いんだ」くらいの感覚でした。
社長は、たまに幹部の度が過ぎるときだけは注意するものの、基本的にはその幹部を信じ切っている状態だったのです。
社長や幹部は、普段からよくこんな愚痴をこぼしていました。
「ウチの社員はやる気がなくて、言われたことしかやらない。
そのくせ反発ばかりするし、いろいろと教えてやっても、すぐに辞めて裏切るだけだ」
しかし、社内で起きている現実から目を背け、このような理不尽な状態を放置していれば、社員がそうなっていくのも無理のないことでした。
■ 3.【メンタルブロックの『利得』と構造の反転】
このケースにおいて、幹部は「あの有名な新聞なら効果があるはずだ」と主張し、社長も「幹部がそう言うなら間違いない」と信じていました。
しかし、心の構造から言えば、幹部は「新人の意見に耳を傾けることで、自分の権威や優位性が揺らぐこと」を無意識に恐れていたのです。
また社長は、信頼する幹部の言葉を鵜呑みにすることで、「自分で深く考えて決断し、その結果に責任を持つ重圧」から逃れていました。
弱い立場の人間に責任を押し付け、自分たちの正当性を守ること。
それによって、「自分の間違いを認める痛み」や「決断の恐怖」という不快な感情から、自らの心を守っていたのです。
これが、このメンタルブロックが無意識下で提供していたメリット(利得)でした。
この無意識の奥で起きている仕組みは、以下の多重構造になっています。
[誤った意思決定と責任転嫁の多重構造]
| 階層 | 構造の名称 | 具体的な状態・心の声 |
| 【表層】 | 表面上の悩み | 「社員にやる気がなく言われたことしかしない、すぐに辞めて裏切る」と愚痴をこぼす。 |
| 【1層目】 | 心のブレーキ(制限) |
◆幹部:「地位の低い人間の意見を受け入れると、自分の価値や権威が下がってしまう」という思い込み。 ◆社長:「幹部に任せておけば安心であり、彼の判断を信じるのが正解だ」という思い込み。 |
| 【2層目】 | 無意識の防衛(利得) | 失敗の要因をすべて新人のせいにすることで、自分の判断ミスや見る目のなさを認めずに済み、痛みを避けて「自分は正しい」というプライドを守る心の働き。 |
| 【3層目】 | 根本にある痛みの記憶 | 過去に自分の過ちを認めたことで激しく糾弾された記憶や、他者に主導権を握られて大きな損失を被ったことによる「常に自分が上でなければ見捨てられる・奪われる」という強い恐怖の記憶。 |
■ 4.【なぜ頭で分かっても変われないのか?】
年齢や立場が上がるほど、多くのリーダーは「公平な目を持ち、客観的なデータに基づいて的確な意思決定をすべきだ」と頭(理性)では理解しています。
「あの人が言うのだから間違いない」という先入観が危険であることも分かっているはずです。
しかし、実際の現場で予期せぬ失敗や損失が発生すると、人間の脳は無意識のうちに「自分は悪くない」「変な責任を負いたくない」という自己防衛を最優先させてしまいます。
なぜなら、その「責任転嫁」や「高圧的な拒絶」という反応は、その人が悪人だからではなく、過去の痛みの記憶から自分を守るために、潜在意識の制限となる思い込みやメンタルブロックが自動稼働している状態だからです。
「誰の責任なのか」という問いに対して、立場の力関係や全体の雰囲気に呑まれ、一番言い返せない弱い立場の人に責任を押し付けることで、人は一時的な心の安定を得ようとします。
「自分を否定されたくない」という無意識の防衛本能は非常に強烈なため、頭の理性だけで「公平になろう」とコントロールしようとするほど、内面の抵抗が強くなります。
結果として、現実のデータ(問い合わせゼロ、アクセス横ばい)を直視できなくなり、「あの新聞社がダメだった」「あの社員がやらせた」と言い訳を重ね、同じ過ちを繰り返す組織体質から抜け出せなくなってしまうのです。
■ 5.【セルフチェック】
普段の忙しい経営やマネジメントの中では、自分自身や自社の意思決定がどのような思い込み(認知バイアス)に支配されているか、客観的に気づくことは困難です。
他人のことは客観的に見えても、自分たちのことになると「これが当たり前だ」と盲目になってしまうからです。
ご自身の日常の判断や、組織のミーティングの空気に意識の焦点を当て、以下の状態が起きていないかチェックしてみてください。
[あなたの組織の「思い込み・意思決定」チェック]
-
[ ] 役職や社歴の浅いメンバーからの提案や指摘に対して、内容を精査する前に「まだ何も分かっていないくせに」と不快感や反発心が湧く
(解説:相手の正当性を受け入れることで、自分の優位性やプライドが脅かされるという心理的ブレーキが働いています)
-
[ ] プロジェクトが失敗した際、承認した上司・管理職の責任ではなく、「提案した担当者の進め方が悪かった」と結論づけている
(解説:承認した側の責任から無意識に目を背け、弱い立場の人間に結果の責任を押し付ける防衛パターンが働いています)
-
[ ] 「あの人が太鼓判を押しているから」「有名な媒体だから」という理由だけで、詳細な費用対効果の検証を省いて決定してしまう
(解説:思考の負荷や決断の重圧から逃れるために、権威や他者の意見に依存する制限となる思い込みが潜んでいます)
-
[ ] 特定の幹部やリーダーが少しでも違う意見を言われると激昂するため、周囲の社員が言われたことしかやらない状態になっている
(解説:高圧的な態度によって職場の心理的安全性が奪われ、社員側がこれ以上傷つかないために「思考停止」という防衛策をとっています)
あなたの会社で、このようなことで社員のやる気が失われたり、自分で考える人材が育たなくなってはいないでしょうか。
まずは現状のパターンに気づくことが、思い込みによる判断ミスを防ぐための第一歩となります。
■ 6.【本来の自分へ戻るステップ】
● 「自分は正しい」という防衛のステージを卒業し、公平な視点を取り戻す
もし、この会社の上層部が「新人のせいにして自分たちの間違いから目を背けている構造」に客観的に気づくことができれば、組織の意思決定の質は劇的に変わります。
先輩や上司が「承認した結果の責任はすべて自分にある」という本来のマネジメントのスタンスに立ち返ったとき、現場のメンバーは圧倒的な安心感を取り戻します。
自分の非を認めることへの恐怖や、立場を守るための過剰な警戒心を丁寧に手放したとき、リーダーの心には本物の器とゆとりが生まれます。
その後、客観的な現実と向き合えるようになった組織では、立場の上下に関わらず、事実とデータに基づいて公平に問題を切り分ける仕組みが機能し始めます。
「自分たちの思い込みで、どれほど現場の熱意を潰していたかに気づくことができました。
おかしいことに疑問を持ち、対等に話し合える環境を作ったことで、社員が自発的に提案してくれる活気ある組織へと変わっていきました」と、リーダー自身の視界も晴れ晴れとしたものになっていくのです。
誰かに責任を押し付けるための無駄な葛藤や言い訳に浪費していたエネルギーが解放されたとき、組織は本来の姿を取り戻し、本当に使うべき「正しい経営判断」や「次世代の育成」へとそのパワーを集中発揮できるようになります。
■ 7.【終わらせる分岐点】
「あの人が言うのだから、たぶんそうなんだろう」という無意識の丸投げや、弱い立場への責任転嫁は、大なり小なりどこの組織でも起きているのが現状です。
年齢や立場が上がるほど、自身の認知バイアスを疑い、公平な目を持つよう心がけることこそが、意思決定を見誤らないための分岐点です。
ここから先、その心のブレーキ、メンタルブロックを緩めていくルートは2つあります。
もし、ご自身のペースで、自分の心の中にある「メンタルブロック24種類心のクセ」のパターンを整理したい方は、以下のステップを読み進めてみてください。
💡 じっくり自分で整理を進めたい方へ:「24種類の心のクセ」はこちら
そして、もし「頭では分かっているけど、どうしても自分では解決できない」「なぜなんだと自分を責めるループから一気に抜け出し、本来の自分を取り戻して実力を発揮したい」と感じる方は、安心してお問合せください。
あなたを責めたり、リーダーの資質をジャッジすることはありません。
個人情報や相談内容は、守秘義務なので、ご安心ください。
セルフイメージコンサルタント
岡崎哲也
■メンタルトレーニンで営業力強化
メール講座(全10回・無料)


